設計の仕事の面白さはどこにあると思いますか?

自分の設計したものが完成品となり、最終的に動いているのを見るときです。開発設計はものづくりの上流工程に位置する仕事で、私たちは発明家であり設計者です。だから、最終目的がわかっている。数限りなく失敗して、どんなに苦労しても、1つ1つステップを踏んでいけば、必ず最後にはゴールにたどりつけます。1mmの狂いも許されない仕事ですから、失敗やミスもあります。しかし、修正を重ね、結果として完成品とならなかった設計をやったことは、30年ただの1件もありません。そして失敗やミスが貴重なノウハウとして蓄積され、次につながる大きな財産となるところも魅力の1つです。

忙しい日々を送りながら、なぜ設計の仕事をつらいと思わなかったのでしょう?

当初から私には、この設計の仕事で独立し、会社を立ち上げるという強い目的がありました。仕事が困難であれば困難であるほど、それらは全て自分の経験・力になりますし、お客様との主張のぶつけ合いも、不可能と思える困難な要求に応えることも、結果としてすべて、自分の引き出しになることがわかっていました。 仕事を誰かにやらされているという意識はなく、全てが自分の目的のためにやっている、一歩踏み込んだ仕事でした。自信がなかった自分が、仕事を通じて成長している実感や自分なりの目的意識があったので、一度もつらさを感じることはなかったのだと思います。
もちろん、私は自分の若い頃のような働き方を、今の若い方に求めている訳ではありません。時代も環境も変わりました。しかし、自分なりの目的意識を持って仕事をすることは、時代を問わず誰にでも必要なのではないかと思います。ぜひ、自分が「どう育つ」か「どうなりたい」かという目的意識を持ってください。
今の時代、スキルアップするための環境や情報は、本人が望めば比較的簡単に手に入ります。スキルアップはそれほど難しいことではありません。逆に、厳しいことを言うようですが、最初から「育ててもらいたい」「技術を教えてもらいたい」という意識で続けることは難しいでしょう。

設計の仕事に向いているのはどんな人でしょうか?

設計の仕事は、自分のミスに言い訳ができない、とても風当たりの強い仕事です。しかし、ものづくりの上流工程ですから、我々の仕事はミスに落ち込んでいる暇はありません。ミスをしたら、すぐにその時点での最良の答えが要求されます。それに基づく設計図ができなければ、ものづくりの工程に関わる人たちが誰も動けないからです。設計図が一旦外に出れば、ものによっては何百人という人間が関わることなります。ミスをして立ち止まっている暇はなく、それだからこそ、常に前向きな姿勢のある人が求められます。
また、新しい機械を開発・設計する究極の目的は、より便利でより使いやすく、効果的な機能を発揮するものを作ることです。人間に代わる便利な機械を作ることで、作業者の方が考えなくてよくなる。それが理想です。しかし、それにより犠牲になるものがあるのではないかと考えたことがあります。私は、作業現場から失われるのは人間性ではないかと思うのです。だからこそ、設計者には、より人間的な豊かな心が必要だと思っています。

設計者として一人前になるためにはどうすればよいですか?

目的意識を持つことです。
設計者の能力は図面を見ればはっきりわかります。 その人の積み上げたもの…経験、知識、スキルが全て図面の中に現れるんです。極端な話、寸法線の入れ方ひとつからも設計者の能力が見て取れます。何の機械で工作するか、どんな順番で組み立てるか、寸法の遊びをどこに作るか…そんなことを考慮して設計しているかどうか、全て図面に現れます。
また設計者の端くれとして、お客様にただ同調するのではなく、真正面からぶつかり、思いを主張すべきところは主張しなくてはなりません。そのためには、どれだけ自分が考え抜いてその結論を導いたか、自分の思考プロセスへのたゆまぬ努力が必要です。
自分の能力を上げ、設計者としての自信と責任を持つためには、経験を積み上げ、多くの引き出しを作ることが必要です。スキルの上げ方も含め、経験・知識の積み上げには、自分なりの目的意識がなければなりません。
MaxWiseを次のステップへの踏み台にしてやろうと思っていても一向に構いません。私は自ら育つ意思のある社員が成長するためのサポートは惜しみません。
私は、設計の仕事は必ずしも会社組織でなくてもいいと思っています。 ただ、会社組織には社員それぞれの経験からくる知恵、衆知が集まります。そこは自分の目的のために、成長する環境になります。MaxWiseは、一人一人目的意識を持っている独立した「個」が、その衆知や環境を求めて集る組織でありたいと思います。